私と父
父は若い頃から鬱気味で、なんだかよく分からない存在だった。
毎日酒を飲んでは撒き散らす、世の中への恨みつらみ妬み嫉み。
もう、聞こえてくるだけで反吐がでそうなしんどさ。
そんな父も笑う事はあった。
私が小学3,4年ぐらいかな? とある日曜日の夕方、父の機嫌が良かった。
私は嬉しくなり、おもちゃを使って父に遊びを仕掛けた。
長女である姉は甘える事が下手だった。しかし次女である私はその辺は上手かった。
今思えば、時間にして大して長くない時間だと思う。
30分もないだろう。
遊び自体は何も面白くないが、父が遊んでいるその事が嬉しくて私はピエロになった。
年齢よりも幼い表現で、実際よりも大げさに振る舞いながら遊ぶ姿はどんな風に見えただろう。
そしてその甲斐があり、父はこう言った。
”あんたが居てるから生きてられる”
私は高揚感に包まれた。と同時に、傍らにいた姉に勝った気持ちになった。
この30分足らずの時間は、私を形成する大きな出来事となる。
”あんたが居てるから生きてられる” この言葉こそが私の存在意義になり、呪文となった。
”姉に勝った気持ち” は、こんな風に思う自分はいい人間ではない と強烈な影を作った。